「閉鎖予定の昔のブログからの転載」ネタ。ホエールの大学時代の友人「F」の伝説がまだまだ続いていきます!
20年前の大学生時代・・・あの頃、僕らに失うものはなかった!!そんな生活の記録です。
連載なので、カヤックフィッシングネタがしばらく登場しません。「カヤックフィッシング」で検索して来ていただいた皆さん、本当にスイマセン!!
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「あーあ、世の中は金、金、金や。金がないとなーんもできん。金が空から降ってこないかなー」僕らはしょっちゅうそんなことを考えていた。
さんざん考えて出た答えは、Fの家でゴロゴロしていても金は増えないってことだ。いや、減る一方だ。当たり前である。
Fはいよいよ働かなくてはならない時がきたのだ。
Fの借金の返済を考えると、割りのいいバイトでないとならない。だが、割りのいいバイトってのにはやはり裏があるものだ。
いくつかの求人情報を見て、二人でバイトを検討する。
そんなこんなで、とある有名な繁華街のキャバクラのホールスタッフに格段に給料がいいのを見つけた。
早速、Fと二人で面接に行く。
いかにも妖しい感じのビルだ。
キャバクラの営業時間前に面接。面接場所はキャバクラの客席。
この頃の僕はスナックは経験済みだったが、キャバクラってのは初めて入った。めちゃくちゃ緊張していた。
そこに現れた店長らしきお方。
パンチパーマにドハデなシャツ、金のネックレスに金のロレックス。
一見して……アッチの世界のお方である!うわーやばいとこ来てもうた~
それから15分ほど、システムを説明されるが、簡単に書くとこんな感じである。
「あのな、どんな気分で来たかわからないけど、遊びじゃないからな。うちは楽じゃないよ。1名呼び込んで~~円、2名以上のグループで~~円。5名以上の団体さんなら~~円。頑張れば稼げるからな。
でも、仕事出来ないようだったら罰金もあるから覚悟しておいてよ。この仕事ってさ、ヤル気次第だから」
ってなことである。
うん。確かに、おっしゃることはごもっともな部分もある。
でも……ホールスタッフって書いてあったのに、呼び込みですか!?しかも、下手したら働いているのに金を取られるシステムですか!?
あまりにも怖そうなお方なので、僕らは「ハイ、ハイ」と聞くしかなかった。
「じゃあ、一晩だけ考えてもう一回電話して。あと、ウチは黒いスーツ着用だから、自前で用意してね。じゃあヨロシク!」
ようやく解放された……
帰りにFと歩きながら感想を述べ合う。
「なあ、どう思う?」
「……アカンやろ。何がアカンって、あの髪型がアカン。チリチリやったぞ」
「明日から行く?」
「行かんやろ~」
「履歴書出しちゃったけど、大丈夫かな」
「ヤバイかもしれへんなぁ……」
「ヨロシク!って言ってたぜ」
「ワシには“夜露死苦”って漢字で聞こえたわ!」
これまで水商売でも働いてきた過去があるFがアカンというんだから、そうとうアカンのだろう。
また路頭に迷ってしまった。
次は、少しぐらい時給が少なくてもまっとうなやつをやろう!ということになった。
結果として『交通量調査』を選ぶことにした。
そう、よく道ばたに座って、通った車の台数を“日本野鳥の会みたいなカウンター”でカチカチ計測しているアレである。
これならまっとうな感じだし、12時間コースで1万3千円ももらえる。がんばって24時間コースをやれば2万8千円ももらえるのだ。
最初に一度だけ講習を受けにいかなくてはならないのがちょっと面倒だが、これはいいぞ!ってことになった。
(講習を受けていないとこのバイトは出来ない決まりらしい)
12時間コースといっても、2ポイントを3人で1時間ごとにローテーションするので実質2時間やったら1時間休めるのだ。
歩行者、自転車、原付、バイク、軽自動車、乗用車、大型車、特殊車両、バスなどをカウントし、1時間ごとに回ってくる監督さんに台数を報告する。
現場を仕切っているのは、僕らが陰でMちゃんとS男と呼んでいた、おそらくバイトでキャリアが長い2人組。その下に監督が数名いた。
この仕切りの2人組・MちゃんとS男は年齢不詳、汚い格好のオッサンだった。そして、かなりえばっていてやな感じだった。
とにもかくにも、仕事内容は楽だった。
だが、逆に楽すぎて、暇がつらかった。
1時間休みといわれても、何もない交差点である。カウンターやってるのも休んでるのも一緒なのだ。いや、椅子があるだけカウンターしてる方が楽かもしれない。
報告の内容も適当なもんだった。
30分ぐらい居眠りしても、その分を取り返すように適当にカウンターをカチカチやればいいのだ。
(※20年前の学生時代のハナシなので・・・時効ということにしておいてください!)
(※20年前の学生時代のハナシなので・・・時効ということにしておいてください!)
監督さんもバイトだから、適当なデータでも何も文句は言わない。
もちろん、意識がある時はちゃんと仕事をしている。カウンターをカチカチやっていないと暇すぎて耐えられないのだ。
でも、12時間も現場に出ていると、そりゃー眠くなる時間もあるってものだ。
でも、12時間も現場に出ていると、そりゃー眠くなる時間もあるってものだ。
一度、僕は居眠りをしてしまって、起きたらそろそろ交替の時間が迫っていた。
やばい!そろそろ監督が回ってくる!と焦って適当にカチカチやってたら・・・
普通車と間違って“バスのカウンターを連射”してしまったことがあった。
普通車と間違って“バスのカウンターを連射”してしまったことがあった。
気付いた時は遅かった。
1時間に通ったバスが42台ということになってしまっていたのだ。
1時間に通ったバスが42台ということになってしまっていたのだ。
さすがに監督さんに「バス42台ってのは多くない?間違いじゃないの?」とつっこまれてしまった。
僕は「修学旅行の観光バスが団体で通ったんです!」と無理矢理に押し通した。
でも、今考えてみても、いくらなんでも修学旅行のバスが42台って言い訳には無理があったな~と思う。
交通量調査って、たぶん国土交通省とかが民間に委託してやってるんだろうけど、こんなデータを元にして道路が作られるんだからたまったもんじゃない。
そりゃー渋滞も起こるってものだ。
面倒な仕事を税金を使って民間の、しかも大学生のバイトに丸投げするからこういうことが起こるのだ!!
(……と自分が適当にやっていたことを棚に上げて思う今日この頃である)
(……と自分が適当にやっていたことを棚に上げて思う今日この頃である)
現場は都内のことが多かったので、自然にFの家に泊まることが多くなった。
このバイトを通じて、僕のFの距離はぐっと縮まった。
12時間働いても、まだ夜の19時である。しかも、手元には日給の現金があるのだ。
2千円ぐらいを夜飯に突っ込んでもそれほど痛くはないから、バイトの帰りに2人で豪華な飯を食うのが最上級の楽しみとなった。
これまで柿ピーやカップラーメンしか食った所を見たことがないFが、美味そうに大盛りご飯を食っている。その顔は満足感に満ちている。
人間、美味しいものを食べると幸せになるってよく聞くが、あれは本当だ。間違いない。Fが生き証人である。
その中でも浅草橋で食ったホルモン焼き屋は最高だったなぁ~。
考えてみれば、Fにとってはいいバイトに巡り会ったと思う。
3日も働けば家賃払ってオツリがくるのだ。それ以上の稼ぎは生活費と借金の返済に回せる。
お財布にも余裕が出てきて、Fと2人で原宿や上野で古着屋巡りをして買い物をしたり、そういった学生らしい遊びが一緒にできるようになった。
そして、Fの穴あきコンバースもリニューアルされた。
そして、Fの穴あきコンバースもリニューアルされた。
その数ヶ月後には、なんと僕もFも“交通量調査・監督”の地位にまで昇りつめていた。
カウンターを回さず、1時間に一回ヒラのバイトの所を巡回するだけで、12時間の給料が1万5千円である。
空いた時間は陰に隠れてジャンプ読んだり、CDウォークマン聴いたりして過ごせちゃうのだ。
しかし、週に1~2回のペースでFの家に泊まって車の台数を数えていたら、僕の学校の単位と地元でやっていたレギュラーのバイトに支障が出始めていた。
Fの生活も軌道に乗ったし、僕の交通量調査はそろそろ潮時だった。このバイトをやめることにした。
僕がやめた後も、Fの方はある事件が起こるまでは監督として交通量調査を続けていた。
ある日、学校で会ったFは「割のいい交通量調査が入ったみたいでな、MちゃんとS男から呼び出されたわ。カウンターやらなあかんらしいんやけど、今から行ってくるわ」と言い残して出かけていった。
しかし、Fはそれから3日間にわたって消息不明となってしまったのだ。
4日後、ヘロヘロになったFが登校してきた。
「F、どうしたんだよ?何日も学校休んでさ~。家にもいなかったみたいだし。一応みんなが代返できるところはしといてくれたみたいだぜ」
「すまんの~、みんなありがとうな。実は、あのMちゃんとS男に拉致されな……大変やったんや。着替えを持ってこいって言われた時に気付くべきやった……」
話を聞くと、MちゃんとS男から呼び出されたFは「24時間の仕事が入ったからやらないか?」と言われた。いつも通り都内の仕事だと思って引き受けたら、その場でバンに乗せられ、なんと大阪まで拉致されたらしい。
しかも、24時間×4日、1日やって1日休む勤務体系の交通量調査だったそうだ。
その間、体臭のキツイ日雇いのオッサン数名と大阪の素泊まり宿のタコ部屋に押し込められていたらしい。F自身も着替えが一着しかなく、同じ穴のムジナになっていた。
そして、3日目に限界が来た。
「このままでは死んでまう……」
そう考えたFは、みんなが寝静まった頃を見計らって、こっそり民宿を出て、もらった給料で新幹線のチケットを買って逃亡してきたのだという。
現在地が大阪のどの区や市なのかさえ分からず、歩きながら地元の人に聞きまくって、命からがら逃げ帰ってきたとのことだ。
勝手に抜けてきたのだから、もう戻れない。
結果的にFはまた無職に戻った。
その後、しばらく交通量調査の金の残りで暮らしていたが、返済が厳しくなってきたFは今度は『血液検査』のバイトを始めた。
要は、製薬会社の新薬開発の実験台、モルモット役のバイトである。
相当いいお金になっていたはずだ。
新薬の実験がある時は、10日~2週間ぐらい学校からいなくなったりすることがちょくちょくあった。
話を聞くと、山奥の研究所のような施設に寝泊まりするらしい。
朝起きたら4人ぐらいが薬を飲まされ、この内、誰か1名だけが実は当たり(新薬)を飲まされている。
(誰が当たりなのかは本人達には知らされない)
そして3時間おきに血液を採られるのだが、空いた時間は特に何もすることなく、本を読んだり、スーパーファミコンをやったりして過ごす。
「めっさ楽チンや。あれは究極のバイトや。問題はタバコが吸えんことぐらいや。まあ、最初に書かされた“事故があっても責任を問いません”っていう誓約書にはちょっとビビッたけどな~ガッハッハ~!」
こんなFが新薬ぐらいで死ぬわけはない……
そんな紆余曲折を経て、なんとかバイトで食いつないだFであるが、あの時の●●ローンの金を全て返しきれてはいなかったし、相変わらずたまに電気を止められたり、所持金が100円を切っていたりはしていた。
ちなみに、Fは外に出かける時は自宅の鍵を開けっぱなしにする。
(盗まれるものがないからだ)
そして、家にいる時は必ず内側から鍵をかける。
(借金取りが来ても居留守を使える)
逆じゃん!!!
しかし、この習慣が、後に語る、おぞましい事件を引き起こす原因の一つになったのだ。
~つづく~