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Channel: TEAM N.W カヤックフィッシング(kayak55公式ブログ)
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カヌー・SUPの安全運航に係る検証の報告・前編

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ホエールです。

 

先日、海上保安庁さんのカヌー・SUPの安全運航に係る検証に参加をしてきました。

 

この検証の趣旨は、現在、増え続けるカヤックの事故を未然に少しでも防ぐために海上保安庁HP内にある

 

ウォーターセーフティガイド

 

の中で検証動画を作るためにあります。

 

特にカヤックの事故においては、海況の悪化で自力で漕いで帰着できない、再乗艇ができないといったことが増えています。

 

さらに事故の多くの割合を初心者が占めるという点から、荒れた状況下でのベテランの操船者と初心者の操船者の違いを撮影して検証することを目的としています。

 

もちろん、本当は実際に荒れた海での検証ができればいいのですが、安全管理ができない、また荒れた日を選べない(関係者のスケジュール、安全管理の船舶のスケジュール的に)といったところから現実的には無理があります。

 

そこで、今回は海上保安庁の海猿の皆さんが訓練で使っている、実際に波や風をおこすことができるプールを使っての検証となりました。

 

詳しくは今後、まだ編集に時間はかかると思いますが、上記、海上保安庁さんのウォーターセーフティガイドHPの中で動画としてまとめられてくる予定です。

 

今回、このブログでは撮影した写真や動画からキャプチャーした静止画を使って、僕らカヤックアングラーに関わりがあるシットオンの部分を中心にレポートしていきたいと思います。

 

ちなみに、今回の検証では

 

◆シーカヤック

 

◆SUP

 

◆フィッシングカヤック

 

を使ってそれぞれ検証が行われました。

 

それぞれベテランの操船者と初心者の操船者が乗艇し、その違いを動画に収めます。

 

シーカヤックと並行してフィッシングカヤックも別途やることになったのは、それだけ

 

フィッシングカヤックの事故が激増しているから

 

に他なりません。悲しいですが事実です。

 

カヤックフィッシングは自分もライフワークとして楽しんでいます。そして多く艇を販売させていただいています。

 

自力で漕いで、魚を見つけて、釣る・・・その浮遊感、海上にポツリと浮かぶ非現実感、釣れた時の達成感・・・本当に素晴らしい趣味だと思います。

 

ですが、命をかけるものではありません。

家族のもとに笑顔で戻る・・・これが一番です。

 

カヤックフィッシング、新しい文化ですが、やはり安全を第一に楽しんでいただける文化にしていかなければならないと思います。

 

そのためにも、海上保安庁さんと情報を共有していき、少しでも事故防止につながる活動をしていきたいと思っています。

 

この検証は5月と6月に2回に渡っておこなわれたのですが、このブログでは1回にまとめて要点を絞って報告していきたいと思います。

 

今回の検証の舞台になったのはここ

 

海上保安庁・横浜海上防災基地

 

この防災基地の中に、海猿の皆さんが普段から訓練につかっている訓練水槽というものがあります。

もちろん普段は一般の人間は使えません。今回は特別に使用を許可していただいています。

 

これがその訓練水槽

 

造波装置・造風装置がついていて、荒れた状況を人口的に作りだすことができます。

 

吹き出し口で風速15m、波高70cm。

もちろん自然の風や波と同じとはいきませんし、風速も吹き出し口から距離が出るほど弱くなっていきます。

 

とはいえ、普段から保安庁の猛者の方々が訓練している状況と同じ場所でカヤックでの実験ができることはすごいことです。

 

その実験の内容としては、荒れた状況下でのカヤックのベテラン操船者・初心者操船者での走破性や操作性のテストをし、そして沈をしてしまってからの復帰を実験します。

 

特に荒れた状況でのセルフレスキューはなかなかやることができないです。

なぜならば、実際の荒れた海での練習はそれ自体が事故につながりかねないからです。

 

この貴重な機会を体験できることはとてもありがたいです。

今日、明日と2日にわたってこのブログで報告していきます。

 

本物の海猿の方が2名ダイバーとして安全面のサポートをしてくれます。

 

ちなみに、フィッシングカヤックのベテラン操船者役は、私ホエールがやらせていただきました。

 

かなり体を張った(笑)ものになりましたが、その検証が今後の事故防止に少しでも役立っていければ幸いです。

 

艇は海ではプロフィッシュ45に乗っていることの方が多いですが、全体的なシェアとしては忍の方が多いため、忍で実験をすることにしました。海で使うカヤックとしては最低限というクラスのレングスです。

 

バイキング・忍のフル艤装での検証です

 

実際に海で使っている装備で実験しなければ意味がないということで、一般的なカヤックアングラーが使っているであろう下記のような装備を積んでいます。

 

◆フラッグ

◆スペアパドル

◆魚探

◆クーラー

◆シーアンカー

◆ネット

◆ロッド2本(股の間に1本、シート後ろに1本)

◆ボガグリップ

◆プライヤー

 

ちなみに私自身はほとんどのケースでソフトクーラーですし、ロッドは1本ですし、シーアンカーはあまり使わないしで、実際の自分の通常装備より重装備となっています。

 

ポイントを絞ってレポートします。

 

今日、報告するのはパドリング、走破性の部分です。

 

今回、シーカヤックやSUPの検証部分は専門家ではないので割愛しますが、シーカヤックとの比較はちょっと記載をしておきたい点です。

 

【シーカヤックとフィッシングカヤックの違いの検証】

 

走破性が違う

 

シーカヤックはフィッシングカヤックと比較して細く、長い。つまり、速いのです。

風、波で荒れた海を再現した状況下でもキールが水中に刺さってスイスイと漕ぎ上がっていきます。今回ぐらいの風と波はごく普通〜に漕ぎ上がっていました。

 

フィッシングカヤックは幅広で短い。つまり遅いのです。

幅が広い、空中に出ているボリュームも多い、艇が短いため、今回の荒れた状況下ではバンバンとバウが水面をたたきながら進んでいく感じです。つまり、速度が落ちやすい。

 

流される姿勢が違う

 

シーカヤックは風を出してパドルを止めると、バウ(カヤックの先端)が風上を向いて流されていきます。

 

フィッシングカヤックは風を出してパドルを止めると、艇が横を向いて流されていきます。

※もちろん艇によってはシーカヤックと同様に風上を向きやすいシットオンもあります(デスペラードなど)

 

また、荷物の積み方や荷重のかかりかたで場合によっては風に流される姿勢はけっこう変わります。

 

ですが、釣りだけを考えると横を向いてドテラで流すことができるフィッシングカヤックはけっこう多いです。そして、実際にドテラ流しができる艇は釣りがやりやすいです。(ちなみにプロフィッシュや忍はこのタイプ)

 

ただ、とんでもない強風時に向かい風の中で帰着をしようと思うとバウが風上に自動的に向いてくれる艇の方が生還率が上がるということは言えるでしょう。

 

このシーカヤックよりも鈍足で、風上に向きにくいという2点から・・・

 

強風や荒れた水面でよりリスクが高いのはフィッシングカヤックだということが言えるのです。

 

実は僕らはシーカヤックよりリスクが高い乗り物で海に出ている、それをよくよく認識しておかなければいけない。

 

これが実際にシーカヤックと同条件で比較してより実感でき、いまいちど、身が引き締まりました。

 

ぜひこれをお読みの方もそういう乗り物に乗っている、だからより海況が良い条件を選んで海に出ていただければと思います。

 

 

【荒れた状況でのパドリング・操作性の検証】

 

上記がシーカヤックとの比較。シーカヤックと比較してしまうと航行性能は確かに劣るのがフィッシングカヤックでした。

 

ですが、比較ではなく単体として見た時にどうだったか、実際はこれが大切な部分になってきます。僕らはこのフィッシングカヤックで海に出ているわけですから。

 

結果は、しっかりとしたパドリングができるかどうかで生還率が変わってくることが分かりました。

 

今回の検証では、同じフィッシングカヤックを使って熟練者と初心者で風・波で海が荒れた状況を再現して風上に漕ぎ上がってターンして戻ってくるという検証をしました。

 

漕いでみた結果としては・・・

 

今回程度の荒れた状況ならば走破していく

 

今回2日間にわたって、人口的な波と風の中を何度も漕ぎ上がってターンして戻ってきましたが、上記のようにシーカヤックと比較すれば遅いものの、今回程度の荒れ方であればフィッシングカヤックでもじゅうぶん漕ぎ上がっていける。また、私がリアルに沈するようなことは皆無でした。

 

まず艇の性能として、今回乗ったバイキングカヤック忍は、海で使うカヤックとしてはレングスは短いモデルですが、それでも今回程度の荒れかたでは漕いでいればバックしてしまうようなことはありません。漕げば必ず前に進みます。

 

忍のレングスは350cm、これより長いカヤックならより走破性が上がってきます。逆にこれより短いカヤックだと走破性が落ちてしまいます。

 

もちろん艇幅やキールの入り方のデザインなどで例外もありますが、正直、やはり忍のレングスが沖に行くカヤックフィッシングでは最低限だと思ってもらうと良いと思います。

 

幅に関しても、バイキング忍は幅が広すぎない点も挙げられます。

 

フィッシングカヤックは走破性だけではなく、釣りをする時の止まった時の安定性(一次安定性)も大切なので、ここがフィッシングカヤックをデザインする上で難しいところなのですが、一次安定性だけを重視して幅が広すぎるカヤックは当然、ボトムが水を受ける抵抗が大きくなり、走破性が落ちてしまいます。

 

ですので、忍より短いカヤックでもキールが尖って細身のデザインで忍より速い艇も存在します(コリンアスリートなど)。また、逆に忍より長いカヤックでも幅が広いため忍より足が遅い艇も存在します。

 

このあたりを総合して、自身のフィッシングカヤックを選んでいくと良いと思います。カヤックから釣りをする上で、けっして幅広だけが全てではないのです。

 

艤装についても、今回程度の向かい風では艤装が足を引っ張るということは感じませんでした。(厳密に言えばクーラーやフラッグは風の抵抗を受けているとは思いますが)

 

艤装で気をつけるのは、全力でパドリングをしなければいけない時に、パドルの軌道の邪魔になるように位置に艤装用品や竿、ネットなどがないように取り付け位置に気をつけること。これは重要だと思われます。

 

そして、荒れた状況下でモノをいうのは、なによりもパドリングです。

 

大切なのはブレードのキャッチです。基本となるパドルの持ち方ができていて、ブレードで水をしっかりキャッチができれば、向かい風でもバックせずに止まるわけです。そしてブレードでキャッチした水を漕げば逆に前に前に進んでいけることになります。

 

当然、ベタ凪の時と比較すれば風の抵抗でスピードは落ちます。長く向かい風の中で漕ぎ続けるためには疲れにくいフォームが大切になってきます。

 

手だけで漕いでいたら限界が近くなってしまいます。フォワードストロークのキャッチとフォームを練習しておくことで、全身の筋肉を使うパドリングができ、トルクが上がり向かい風に負けにくく、長くその動作を続けることもでき、つまりは帰還しやすくなってきます。

 

しっかり曲がることも大切です

 

真っ直ぐ進むフォワードストロークと同様に大切なのが、カヤックを曲げるスウィープストロークです。

こちらもブレードでキャッチをしたら、スターン側までキャッチしたままブレードをしっかり寄せてあげることでカヤックがきっちりと曲がっていきます。

 

パドルは水をキャッチした方向と反対方向に推進力がかかります。スターン側までしっかりスウィープストロークを漕ぎ切ることができればスターンはパドルで漕いだ側に横に流れ、つまりバウが回っていきます。

(逆に言えばフォワードストロークの時にスターン側まで漕ぎすぎれば真っ直ぐ進まなくなります)

 

特に今回のように風だけではなく、波を受けている状況下ではより正確にしっかりとターンしないと横向き状態が長くなり、横から波を受けて沈しやすくなります。

 

その際、やはりバイキング忍のような重心が低めのフィッシングカヤックは艇が傾いた時の粘りが出ます。今回程度の波ではひっくり返りそうになることさえありませんでした。

 

他にもプロフィッシュやデスペラード、ファルコンやコリンアスリート、スキマー140や旧型マンタレイなどなど・・・重心が低めの設定されているフィッシングカヤックは多くあります。

 

重心が高いと傾けへの耐性が低くなるので、やはり手漕ぎのフィッシングカヤックでは重心が低めのモデルが荒れた時の操作性を考えるとおすすめです。宣伝っぽくなって申し訳ないのですが、もちろん上記は私が知っている限りの一例です、上記モデル以外でも、沖に行くカヤックフィッシングをされるならば重心の低さも検討材料に入れてみてもらうといいのではないかと思います。実際、荒れた状況を再現した中で漕いでみての正直な感想です。

 

 

【初心者の方が荒れた状況で乗った時】

 

やはりパドリングスキルの違いは大きく出てしまいます。

 

しかし、シットオンは初めてでもけっこう乗れてしまう

 

これもひとつの事実です。

 

初心者役は今回は海上保安庁の職員さんが努めてくれました。

 

ほぼ未経験の状態からいきなり乗った時の検証では・・・

 

シーカヤックはふらふらで最初は漕ぐのもままならない感じでした。

 

しかし、シットオンは意外に初めて乗っても凪の状況ではけっこう乗れてしまうのです。

 

これはいいところでもあり、悪いところでもあると感じました。

 

海上保安庁の屈強の職員さんでも、荒れた状態を試すと・・・

 

ターンがなかなかできず・・・

 

波に対して逆にリーンを入れてしまった瞬間・・・

 

 

やはりここに経験の差がでます。

 

ただ、この初心者役の方は、6月の二回目の実験では荒れた状況下でも沈することなく2周してしまいました(さすが海猿!)

 

二回目の実験、パドルの持ち方などは手の幅が狭くて進みは当然遅いながらも・・・

 

なんとか乗れてしまう

 

これが、逆に危険につながりやすい面があるのだと思います。けっこう乗れてしまうからスキル不足で沖に出てしまう、そして風に吹かれて漕ぎきれなくなってしまう。

 

今回は屈強な海上保安庁の職員さんだからという面もあります。それでもこのパドルの持ち方ではとても長い距離の強風の向かい風は漕ぎきれないと思います。

 

では周りに教えてくれる人がいなくてカヤックフィッシングを始める時、どうしたらいいのか?

 

それは・・・やはりスクールに一度行ってみていただくことだと思っています。

 

今回挙げた真っ直ぐ進むフォワードストローク、しっかり曲がるスウィープストローク、これが基礎でありもっとも重要なパドリングとなります。この基礎の漕ぎ方はリバーカヤックもシーカヤックでも同一です。カヤックアングラーの方は、ぜひ一度はお近くのカヤックのスクールに行って習っていただきたいのです。

 

もちろんスクールに通いこんで極めていくのもいいですが、そこまではなかなか大変だと思います。でも、スクールに一回でも行ってもらうと基礎部分は教えてもらえます。

 

あとは釣りをしながらその習った基礎のパドリングを磨いていけば良いと思うのです。

フォワードストロークもスウィープストロークも練習に終わりはないので・・・

 

基礎を知っているか知っていないか、これだけで大きな差が出てきます。知らないことを練習することはできませんから・・・。

 

ここで告知なのですが、9月14日(土)に神奈川県の久留和海岸にてフィッシングカヤックの安全講習スクールをコア・アウトフィッターズさんと行うことに決まりました。通常のカヤックスクールの料金がかかりますが、基礎的なパドリングとレスキュー練習を1日コースでおこないます。先着10名程度の少数精鋭で行う予定です。気になる方はぜひご予定空けておいてください。(詳しい募集方法は後日)

 

明日の更新ではこの海上保安庁・訓練水槽を使ったセルフレスキュー(再乗艇編)をレポートしたいと思います。

 

〜明日につづく〜


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