kayak55.com艤装のコーナー用の記事です。
今回はポリエチレン製の艇の艤装跡の穴の塞ぎ方について。
(FRP艇やABS艇では以下の方法は使えません)
ちなみに、今日紹介する穴埋めの行為はメーカーのサポート外なので、失敗すれば本体を変形させてしまうリスクがありますので、自己責任でリスクを覚悟して作業しなければなりません。
例えば、艤装の変更等で不要になったベースマウントを取ってしまいたいということがあったとします。
しかし、ベースマウントを取り去るとビス穴が残ってしまいます。
そのままにしてしまうと、浸水の原因となるので何かしらの方法で埋めてあげなければなりません。
ポリエチレン艇において、そのビス穴を埋める方法の一例をご紹介します。
艤装跡だけでなくとも簡単な傷やピンホールなどの補修にも応用ができます。
ただ・・・もしポリエチレン艇が大きく割れてしまっていたり、スカッパーホールにクラックが入ってしまっている場合は、もうその艇は寿命だと思っ方がいいです。あまりにも大きな割れなどは修復しても再度同様のことが起こるリスクが大きいのでカヤックの買い替えをおすすめします。
【穴埋めの一例】
例えば、このスターポート、取り付けてみたものの・・・もう不要だし、車載の時に邪魔だし取っちゃいたいな・・・となった時。
スターポートのようにタッピングビスで止まっているものは、ネジを外せば簡単に取り外しができます。
しかし、取り去った後にはビス穴が残ってしまいます。
このままでは艇内部への浸水の原因になってしまい、安全面を考えても埋めてあげたいです。
ポリエチレン製のカヤックの修復にベストなのは、同じポリエチレンの素材を熱で溶かして埋めてあげることです。
<kayak55で修復に使用しているモノ>
カヤックの端材
なるべく同じ色の端材を用意した方が修復跡が目立ちにくいです。
端材に関してはご購入されたショップに問い合わせをしてみてください。
今回使用したバイキングカヤックに関しては国産のため、端材が比較的手に入りやすいです。(オーダーカラーなどの場合、完全に同じ色の端材のご用意は難しい場合があります)
しかし、端材は輸入艇に関しては基本的には用意されていないことがほとんどです。
※もし端材が手に入らない場合、ご自身でフラッシュロッドホルダーなどを新規に増設すれば、その時にホールソーで開けた穴の分の端材が手に入るはずです。
ヒートガン
端材を溶かすのに使用します。温度調節機能がないものは熱くなりすぎるため、温度調節機能があるものがおすすめです。
kayak55で使用しているのはHAKKOのヒーティングガン882という商品に先端はA1111という局部加熱用のアタッチメントを取り付けています。
まず、端材そのままでは使えないので、切り出します。
うまくやれば小刀や彫刻刀などでもできると思いますが、案外端材は頑丈だし歯が滑ってしまい切り出しにくいんです。あまやまって手を切ってしまわないように十分な注意が必要です。
(くれぐれも自己責任で慎重に!)
この時、カンナだとやりやすく、怪我のリスクも少ないんです。
この端材の切り出しの形状が穴埋めの最大のコツだと言ってもいいと思います!
では、いよいよ穴埋めに入っていきましょう。
ヒートガンの温度ですが、HAKKOのヒーティングガン882には詳細な温度表示がないのですが、HAKKOのヒーティングガン882の最大温度が450度なのですが、1〜6まであるダイアルの3.5ぐらいでやっています。(250〜300度ぐらいなのでしょうか?不明です)
あまりヒートガンの温度を熱くしすぎると本体が溶ける可能性があるのでご注意ください。
線状の端材の先端をヒートガンで溶かしながら、線状の端材を押しこんでいきます。
他の艇での写真ですが、こんな感じです。
この動作のために端材の線状の切り出しは7〜8cm欲しいのです。
コツと注意点は・・・
①熱風を当てすぎないこと。
線状の端材はすぐに溶けるので、穴が埋まったらそこでヒートガンを素早く離します。
熱風がアタリすぎると本体が変形を始めてしまうので要注意です。
②ヒートガンの先端を本体につけないこと。
ヒートガンの先端が触れたらその場所が一瞬で溶けます。
③穴の周りの本体部分に触れないこと。
本体もそうとう温まって柔らかくなっているので、指で触っただけで凹みます。注意です。
できました。
次に片手に彫刻刀(のような金属製のヘラのようなもの)、片手にヒートガンで表面を整えます。
他の艇での写真ですがこんな感じです。
ササっと表面を彫刻刀の平らな面で撫でてあげてならしてあげます。
これもまた、上記の3点に気につけながらササっと一瞬での作業で済ますのがポイントです。
これを全ての穴でくりかえして終了です。
キモは手早く、端材を余分に溶かしすぎないというところでしょうか。
端材の色が合っていれば、遠目で見ればすぐにはわからないぐらいにはなります。
でも、近づいてみると・・・
穴の修復跡はどうしても出てしまいます。
ただ、これで浸水はなくなりましたので安心して使えます。
こんなかんじで、端材と道具があればピンホール程度の穴の修復は個人でも可能です。
【その他の方法】
もしヒートガンを持っていないという場合は、以下のような方法でも穴を塞ぐことはできます。
例として端材を使ってシュミレーションしてみます。
ヒートガンで端材で埋める以外の方法として一番簡単なのは・・・
ポリエチレン艇で穴より大きいタッピングビスで止めてあげれば材自体にネジ山が噛むので浸水はしにくいです。
メリットは本体を変形させてしまうようなリスクが無いこと。
デメリットはネジ頭が艇の上に残ってしまうこと。
もうひとつの方法としては・・・
シリコンコーキング剤やポリエチレンに使用できる接着剤を使って・・・
メリットは本体を変形させてしまうようなリスクが無いこと。
デメリットは、やはり応急処置的な方法であって、永続的とは言い難いこと。正直あまりおすすめではありません。
もうひとつの方法としては・・・
ヒートガンより一般家庭によくあるものだと思います。
ハンダゴテの先端は300度ぐらいになるので、端材はすぐに溶けます。
ヒートガンの時と同じように端材を7〜8cmの線状に切り出して・・・
ヒートガンの時と同じように片手に線状の端材を持って、片手にハンダゴテで、端材の先端を溶かしながら押し込んで埋めていきます。
ヒートガンより作業効率は落ちますが、うまくやればヒートガンでの作業と同じように穴が埋められると思います。
本体を凹ますリスクも少ないです。
注意点はハンダゴテの先端を穴以外の本体に触れさせないことです。
少しでもハンダゴテの先端が本体に触れればその場所が一瞬で溶けます・・・
やはり、しっかり穴を埋めたければ同じポリエチレン素材で・・・ということになると思います。
ただ、繰り返しになりますが、失敗すれば本体を変形させてしまうリスクがありますので、自己責任でリスクを理解して作業しなければならないのでご注意ください。